デフアカデミーへの想い(西岡顧問より)

2014年、私には人生を変えるような出会いがあった。
「ご両親がデフで母語が手話の健聴者?」「CODA?」
彼こそが、現在のサイレントボイス代表の尾中友哉氏だった。
 
 
ずっと、幼児教育や発達障害を含む障害児教育に関わる教材の研究開発をしてきた私にとっては衝撃だった。
乳・幼児に対する親の語りかけは言葉を伝えるだけではなく、親の愛情を伝えるにも必須であると当たり前のように考えていたのだが、彼は愛苦しい笑顔で今後の人生について語ってくれ、私の根本の常識は見事に覆されたのだ。
声(音)で言葉をかけなくても、こんな素敵な青年に育つのだ。
 
 
大学で環境科学を学んでいた私は、方向転換。聴覚障害児の教育の在り方を模索し始めた。
その後、彼を取り巻くデフの人たちともたくさん知り合いになり、イキイキと人生を謳歌する青年たちの魅力に惹きこまれていく。
そして、尾中氏のろう者であり、カフェを営むお母さんの言葉に再び「可哀そうな人たちを救いたい!」などと思う傲慢な考えはぶっ飛んでしまった。お母さんは、「今、聞こえる耳を与えてあげると言われても必要ありませんね。聞こえなくて良かった!」と全ての人を引き込むような笑顔で優しく話してくださった。
 
 
そして、きこえに問題を抱える子ども達への障害児教育の様々な論文を含む書物を読み漁る中、当初は発語や構文指導などに意識も向けられていたが、実は本質が異なることに気づいたのだ。
私は医者でもなく、聞こえない子どもたちに聞こえるように指導することは無理だが、彼らは聞こえないが故の強さがあるのだ。利用されない脳の聴覚野に視覚野が広がるカナダの論文にも目を奪われた。
 
 

そうだ!
 
 
全ての人間に凸凹があるのは当たり前のことだ。しかし、個性では済まされないハンディがあると叱られる方もおられるだろうが、「できないこと」に焦点を当てるのではなく、「できる」ところを見つけることこそ、指導者の大きな役割である。
聞こえないからこそ、目を使う。視幅も広がっていく。これが強みなら、強みを活かす教育が必要だ。耳も目も失った人もおられるかもしれない。それでも、強みを見つけてあげよう。そこを伸ばしてあげるよう寄り添っていきたい。
その子どもたちの存在を認めてあげて、できるところを大いにほめることができる教材を開発していくんだ。デフアカデミーは、そんな自分の使命に気づかせてくれた場所でもあり、とても感謝している。
 
 
私の指導の目標は挫折したり、傷つけられることがあっても折れない心、レジリエンスを高めることにある。
そして、デフアカデミー顧問としての更に大きな目標がある。
それは、デフアカデミーはデフの子ども達だけを育てる場所に非ず、デフアカデミーでイキイキやり甲斐をもってデフの子ども達の指導にあたるデフが従事する場所としても存在することである。
 
 
「きこえる」「きこえない」そんな壁を乗り越えた本当のダイバーシテイがここには存在する。そんな言葉が巷で聞こえるように微力ながら、貢献させていただきたい。